シュガーメロディ~冷たいキミへ~
「とりあえず、もう一度はじめから弾いてみましょうか」
「……はい」
先生の言葉に頷いて、白い鍵盤に乗せた指。
……だけど。
きっと何度弾いたって同じだろうと、弾く前から分かった。
いつもなら見た瞬間に、頭の中で考えるより、指を動かすより先に音になって踊り出して見える音符。
それが、今は。
白い楽譜の上に書かれた、ただの記号に見える、今は。
きっと自分が嫌になるような演奏しかできないだろうと思った。
……どうしよう。
それでもどうしても諦められなくて鍵盤を叩く。
だけど、音を奏でれば奏でるほど、泣きたい気持ちに駆られた。
────どんなことがあっても嫌いになれなかったピアノ。
私にとっては言葉よりずっと気持ちを表す術。
自分らしい自分を表現できる術だったのに。
……こんなの、私の音じゃないよ。
思い通りに響かない音色は、まるでピアノが私を拒絶しているかのように感じた。