シュガーメロディ~冷たいキミへ~
♯ 4 大切な人【side* 航】
♯4-side* 航-
「これ、ありがとう」
普通科の教室にやってきて、そう言って両手で大きめの袋を俺に向かって差し出した雪岡は、ずっと俯きがちで視線を下げたままだった。
「あー、うん」
袋を受け取って中をのぞいてみると、思った通り、文化祭で彼女に貸したパーカーが入っていた。
洗濯してくれたのだろう、袋を少しあけただけでふんわりと優しい香りが鼻腔をかすめる。
「……じゃあ行くね。本当にありがとう」
「え」
わざわざパーカーを届けに来てくれただけだったらしい雪岡は、固い表情で一度顔を上げると、ぺこりと頭を下げ、タタッと駆けていってしまった。
……かたい表情、っていうか。
「……泣きそうな顔……?」
痛みをこらえるように眉をキュッと寄せて。
小さな桜色の唇は強く結ばれていた。
「話があるんじゃなかったのかよ……」