シュガーメロディ~冷たいキミへ~

ギュッと、思わずパーカーの入った袋を持つ手に力が入った。


「あれ。リオりんもう帰ったの?」


逃げるように駆けていった雪岡を追いかけたい衝動を抑えて自分の席に戻れば、前の席の友哉にそんなことを言われる。

意外、とでも言いたげな顔。



「……ん。パーカー返しに来ただけだし」


椅子に座りながら友哉の言葉にそう返し、何も気にしてないように振る舞ったけど、友哉にそんな虚勢は通用しなかったようで、今度はなんだか憐れむような顔をされた。


……なんだよ。


「……つか、むしろ前よりよそよそしくなってる気がするんだよなー……」


内心穏やかじゃないことがバレているなら隠す必要もないだろうと、大きなため息と一緒に吐き出したのは、そんな言葉。



『私だって、いつまでも水無月くんのことを好きなわけ、ない……!』


文化祭で、今にも泣き出しそうな声で雪岡にそう言われたとき。

自分でも意外なくらいに傷付いた。


雪岡が変なやつらに絡まれているのを見て彼女をその場から連れ出したのは、雪岡のためというよりは、嫌だ、と思う気持ちに突き動かされての行動だった。


……他の男に雪岡が触れられることが、たまらなく嫌だった。

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