シュガーメロディ~冷たいキミへ~
「……ありがとう」
懐かしさと恥ずかしさの入り混じった想いでいた私は、呟くような水無月くんの言葉で現実に引き戻された。
ありがとう、って。
いったい何が……?
突然お礼を言われる理由がさっぱり分からずに、私は首を傾げた。
お礼を言いたいのは、むしろ私の方なのに。
のん先生のもとでもう一度ピアノが出来るのは、水無月くんが先生の傍にいてくれたから。
水無月くんがいてくれなかったら、きっと。
私がどんなに泣きついたって、先生はもう一度ピアノを好きになろうとは思ってくれなかった。
「母さんは雪岡の言葉に本当に救われてたよ。もう一度ピアノに向き合おうとしたのは、雪岡の言葉を信じたいと思ったからだと思う」
「私の言葉を……。
え、でも、きっと私がいなくたって、先生はまた優しいピアノを弾けるようになってたと思うよ……?」