シュガーメロディ~冷たいキミへ~
ゆっくりと、想いを噛みしめるような声。
水無月くんの言葉に、私は胸の奥があたたかくなったのを感じた。
水無月くんが言うように、何度も先生のところに通って、私なりに想いを伝えていたことが、先生の一歩につながっていたのだとしたら、すごくうれしい。
……すごくすごく、嬉しい。
「本当に、ありがとう」
さっきも口にしてくれたその言葉を、もう一度、今度は頭を下げて言ってくれた水無月くん。
何か言葉を返さなくちゃと思うのに、今、言葉を発したら、涙声になってしまうような気がして、何も言葉にできなかった。
「……俺も、さ。雪岡が言うように、きっと母さんは、二度とあの頃の……、荒れてた頃の母さんに戻ったりはしない、って分かってたんだ」
私が何も言えないでいると、水無月くんは顔を上げ、どこか緊張したような面持(おももち)で、そう言った。
「頭では、ちゃんと分かってたんだよ。
雪岡のピアノが昔の母親のピアノに似てるからって、家族がまたバラバラになるわけじゃないって。……でも、やっぱりまだ怖かった」
そう言った水無月くんは、ゆっくりと視線を伏せた。