【新】サンタの仕事も楽じゃねぇ
「ママー、駅前でサンタさんがチョコレート売ってるよー」
心の綺麗な子供が不思議そうに母親のスカートを引っ張る。
母親は季節外れのサンタの発見に、微妙な空気を醸し出す。
これが12月だったら、笑顔で『サンタさ~ん』と黄色い声を上げるものの、今は2月だ。2月の町にサンタは似合わない。
しかしそんなものは知ったこっちゃない。
「おいしいチョコレートはいかがですか?」
「おいしい、おいしい、チョコレートだよ!」
「ちょ~これ~え~と~・・・ちょーこっ」
あたかもそれは石焼き芋を思わせるメロディだ。
朝のラッシュ時に誰が駅で足を止めるか。
軍隊のようにただ黙々と駅構内へ入り、会社へ向かう人々の群れに、サンタとトナカイは不釣り合いすぎた。