【新】サンタの仕事も楽じゃねぇ
「タクローさん、これじゃ売れないですよ。出直しましょう」
トナカイはいい加減、恥ずかしくなってきた。
「よし」
すんなりと話が運んだことに違和感を覚えるも、トナカイは機会を逃すまいと、いそいそと帰り支度を始めた。
「お前がここに残って売れ」
タクローの心無い言葉にトナカイは赤い鼻を青くさせた。
「タクローさんはどこに行くんですか?」
「コーヒーブレイクだ」
「......私だけ一人で?」
「いいか、よく聞け。ここに可哀想な動物が一匹いるとするだろう? そうすると町の人はどう思う?」
トナカイはタクローの言葉を待った。
「哀れみだ。生類憐れみの令だ」
目を糸のように細くして嫌悪感をバリバリに出しまくるトナカイ、そのオーラをタクローはぶったぎった。
「今日の夜メシはお前の働きにかかっている」
背中をポフっと一つ叩くと、じゃ、そういうことで。
雑踏の中へ消えて行くタクローにかける声はなく、トナカイはただただタクローの背中を消えるまで見続けていた。
と、後ろで誰かの話す声が耳に入ってきた。