【新】サンタの仕事も楽じゃねぇ

 仕方なくタクローとトナカイは網走へと出向した。いや、しざるをえなかった。

「いやーしかし寒いっすね」

 トナカイが鼻を赤くして白い息を吐いた。

「こんなとこになにがあんだっつんだよ」

 タクローは網走湾を細い目で見ながら葉巻をくゆらせた。

「てかよ、プレゼントって何があんだ?」

「えーと、『ザ・脱獄計画』『HOW TO 堀り方』『スプーンの役割』『ホールハイド』『壁のふしぎ』とかですかね」

「決まりだな」

「え?」

「26日にちゃちゃっと配るべ」

「ドンに見つかったらやばいっすよ。ちゃんと仕事しましょうよ」

「んにゃ、明日でいい」

 タクローのこの一言で網走地区のクリスマスは26日に変わった。

24日の夜中から25日のクリスマスの日にかけて、それは、サンタを生業としている者が一番忙しく稼ぎまくる日に、タクローとトナカイは、昭和の香りのぷんぷんする網走の廃れた飲み屋街へと繰り出し朝までへべれけになって飲み続け、豪快に金を使い、酔いつぶれた。


 25日の夜、緊急集合がドン*サンタから入った。

 全サンタは24日の夜中から朝にかけて一生懸命にプレゼントを配ったので、25日は疲れ果てて一日家でのんびりして、夕方頃に集計に入ることが多い。

 シャンシャンシャンシャン......というトナカイの鈴の音をBGMにサンタクロース振興協会の会議室に集まった。


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