【新】サンタの仕事も楽じゃねぇ
「ほんとー?」
「サンタに二言は無い」
「タクローさん、やめてくださいよ。まだ子供じゃないですか」
トナカイは子供に渡されたワンカップを奪い取ると、桜の木の下にパシャリと捨てた。
木の根に染み込んだ日本酒を、桜の木の根っこは吸収力抜群のタオルのように一気に吸い込んだ。
ほんのり桜色に変わった桜の木は、しゃっくりをしたかしないかはさておき、枝をゆっさゆっさと揺らして、桜の花びらの舞いを皆様に披露した。
桜吹雪が見たければ、桜の木の下に日本酒をやや多めに撒くといい。
気を良くした桜の木が気分で桜の花びらの舞いを見せてくれるかもしれない。
桜の木の気分次第だが。
あ、ここですここです! と、タクローとトナカイの方へ黒い塊が小走りにやってきた。
その辺にいる花見客も何事かとその光景をまじまじと見ている。
「あそこにいるサンタとトナカイのコスプレをしている変なおじさんたちが、うちの子供にお酒を飲ませようとしてるんです!」
うっすらと通報されている一人と一匹は、咄嗟に席を立つ。