【新】サンタの仕事も楽じゃねぇ
そのころタクローとトナカイは爽やかな小鳥のさえずりを子守歌に大股開きで畳に寝っ転がり、朝の二度寝を気持ちよく行っていた。
電話の音が耳にこびりつき、一時の安らかな至福タイムを台無しにされては困ると思ったタクローは、足の親指と人指し指を器用に使い座布団を挟み、電話の上に乗っけた。
くぐもった音は怒りにも聞こえるが、そこは無視。
諦めたのか電話は鳴るのを止めた。
垂れたよだれを舌で舐めると、口周りについている残ったよだれを毛づやのあまり芳(かんば)しくないぞうきんのようなモノで拭いた。
トナカイはそれを細い目でみやり、鼻の頭のところに皺を寄せた。そのぞうきんのようなモノとは、トナカイの背中だ。
再度やかましく電話が鳴り響き、トナカイが仕方なく対応した。
「タクローさん、起きて下さいよ」
タクローの腹辺りを蹄でつっつくトナカイはなかなか目覚めようと努力しないタクローに苛立ち始め、思い切り蹴っ飛ばしてみる。
トナカイに蹴られたタクローは、このクソトナカイが! と怒鳴って一瞬で起き上がり、ボディーブローをかまそうと体勢を整えた。