【新】サンタの仕事も楽じゃねぇ
「みんな集まったか?」
ドン*サンタがいつもの格好に赤いマフラーを蛇のとぐろのようにぐるぐるに巻き、ステージの上でポケットに手を突っ込んだまま仁王立ちしていた。
「まだ、網走組が帰ってきていません」
優秀なスイスのサンタが全サンタ代表で発言した。
「んあ? あいつら、またさぼってやがるな」
ドン*サンタがあからさまに舌打ちをした。
その頃、当のタクローとトナカイは温かい羽毛布団にくるまり、夢の中の住人となっていた。
プレゼントを貰えなかった網走地区の子どもたちの大泣きする声など聞こえるはずもなく、大人達の抗議の声もシャットアウトし、夢の世界で楽しくやっていた。袋の中のプレゼントは届けられることなく、そこに残っていた。
「追放だな」
ドン*サンタはじーころじーころと黒電話を回した。
「スイスサンタよ、すまぬが網走地区の子どもたちにプレゼントを配ってきてくれ」
「わかりました」
にこりと笑ったスイスサンタは優秀なトナカイと共に、風のように去った。
スイスサンタのおかげで一日遅れでプレゼントを貰った子ども達は、おまけのプレゼントに気をよくし、笑顔で二つのプレゼントを受け取った。
それに加え、両親にもサプライズギフトを配り、一流サンタとダメサンタの格の違いを、まざまざと見せつけた。