【新】サンタの仕事も楽じゃねぇ
「確かに」
「いえいえ」
「それじゃ」
「今回は早いですね。あなたと葉巻を吸いながら昔話をするのを楽しみにしていたんですけれど」
「これは失礼。最近じゃドンの目がひかりまくってましてね、長居できんのですわ」
「ああ、だからトナカイちゃんも置いてきたんですねぇ」
そういうこった。と言いながらタクローは腹に巻いてきた特殊な腹巻きに目の前に並べられた現金の束をせこせことつっこんだ。
「これからどこへ?」
「バカンスで南の島にでも行こうかとね」
「ああ、それはいい。楽しんでください」
「それではまた。あ、そうだ。霧吹のぼっちゃんにこれを」
ポケットから無造作に出したのは、『壁のぶっ壊しかた』と書かれた本。
「さて、これは一体?」
「いやね、クリスマス時期でもないのにぼっちゃんからの強い想い、いや、念みたいなのが届きましてね、この本を心底要求してまして」
「あぁ、なるほど、そうでしたか。ははは。いやけっこう。もう必要ないですな。出てきましたから」
「お、なんと! ぶちこまれてましたか。いやはやこれでひとつ大人の仲間入りですな」
ぶわははははと2回目の下品な笑いを部屋に響かせた。