【新】サンタの仕事も楽じゃねぇ
「いつまでたっても学習しないお二人ですね」
真夏なのに冷たい空気がタクローとトナカイの顔を撫でる。
身震いをひとつ。
視線を合わせると、そこにいたのは紫色の紫陽花を身体中に纏った女性がひとり、砂浜に足跡を残さず歩いてくる。
「おー、これはこれはあざみちゃん。こんなところで何を?」
タクローはあざみと呼んだ女性、いや、近くで見るとまだ高校生か大学生くらいにしか見えない人物に声をかけた。
「夏場は海に潜って獲物を」
「いやいや、ここはあなたの管轄じゃないでしょう? 早く線路下に戻ったほうがいい」
「あなたも一緒に行ってくれるなら」
「残念ながらそれはできねえな。俺はサンタクロースだからなぁ。そっちには行けねぇわな」
ここで何を? という質問はスルーして、タクローは双眼鏡と水着のお姉ちゃんを交互に示す。
「ああ、覗きをしているんですね」
ストレートに言われると、それはそれでけっこう堪える。
「いや、違うぞ。これから金儲けをひとつしようかと」
「海でお金儲けが?」
当たり前よと自慢げに頷き、後ろの海の家を顎で刺す。