【新】サンタの仕事も楽じゃねぇ


「この海の家を建てたのは俺だが、働き手はたくさんいるからあとはガッポガッポ稼ぐだけよ」


 あざみは真っ白い顔を海の家に向け、真っ赤な口を不気味に開き、笑う。




「いやいやいやいやいや、頼むから笑うな」

「なぜ」

「海に幽霊はお呼びじゃないんだよ。それでなくてもお盆時にはそういう噂で怖がる輩が多いんだからわざわざ怖がらせなくてもいい。それに商売上がったりだからやめてくれ」


 あざみはタクローを不服の目で眺めるが、意図するところを察し、踵を返す。

「どこ行く?」

「海の中に」

「そんなとこに金目のもんはなんもねーだろうがよ」

「いいえ、サンタクロースには分からない世界がありますから」


「まぁ、あれだ、なんでもいいけど、俺の商売の邪魔だけはすんなよ」



 睨み付けるような視線もタクローにとっちゃ痛くも痒くもない。
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