ボクはキミに恋をした
そんなボクを見てギンさんは少し頬をあげ、そして少し怖い顔になった。
「良いか?ケン。ニンゲンに自分が狼だって気付かれるな、これは絶対だ。そして…」
ギンさんは俯いた。なんなんだろう。
そう思ってたらいきなり顔をあげ、今までみたことのない真剣な顔でボクを見てくる。目が離せなかった。
「ニンゲンを好きになるな」
その言葉をかき消すように風がビュウッと吹いた。
「?好き?ってナンですか?」
好きという言葉は初めて聞いた。
一体どんな意味なんだろう。
クエスチョンマークを頭に浮かべているとき、ギンさんがぶはっと笑った。
「くっくっ…何でもねぇよケンにはまだわからなくて良いや。とりあえず山の麓に家がある。そこのばぁちゃんに世話してもらえ」
「ワカリました!!!」
ボクが麓に降りるとき、ギンさんや仲間が見送ってくれた。
1人前になって帰って来ます、とみんなに叫び、ボクは軽やかに山を降りた。