徹底的にクールな男達
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「あれ、ここで寝なかったの?」
武之内は半分身体を起こしながら、少し驚いた顔で今目覚めたばかりの麻見を見た。
「…………、狭くて息苦しくて」
「ごめん。俺が下で寝るべきだった」
朝一で、そんな悲しそうな顔をされたって。
「いえ、大丈夫です」
部下はそれ意外に言葉を出せはしない。
「朝ご飯どうする?」
「…………」
どうするって、今からご飯炊いても時間がかかりますが……。
「……コンビニで買って来るよ。何がいい?」
「何でもいいです」
パンの種類とか言っても分からないって言われそうで、あえて避ける。
「あそう。じゃあ行ってくるよ」
あそう、って口癖だろうか……。
気になりながら、コートを羽織り玄関へとそのまま向かう武之内の後姿を目で追う。
こういう時、行ってきますのキスをするのが恋人同士のような気がした。
だけど、とても足が動かなかった。
しかも、炬燵で寝たせいか、とても身体が重くてだるい。
何も考えていないのに、頬から涙が出た。
何の涙なのか、自分でもよく分からないままに。