お兄ちゃん……


 そんな気持ちで二階の兄の部屋から、一階にあるリビングへと向かう。

 そのリビングのすぐ近くには台所があり、そこで母親がエプロン姿で料理をしていた。

私は、リビングにある椅子に腰かけて母の背中に声をかけた

「お母さん、お兄ちゃん起こしてきたよ」

「いつも悪いね、奈央」

 そう言いながら、顔を私の方に向けてにこりと笑う。

 母は今年50歳。でも、とてもそんな風に見えない。

 肌は綺麗だし、最近染め直した茶髪は若々しい。

「そういえば、お父さんは?」

 私は、リビングを見回しながら訊ねた。

 いつもなら、椅子に腰かけて新聞でも読んでいるのに。

「お父さんは、仕事。今日は予約いっぱいなんだって」

「ふぅーん」

 私は、どうでも良い様な返事をする。
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