お兄ちゃん……
他人だから仕方ないかもしれないけれど、お兄ちゃんはもう家の家族なんだから父や母の気持ちが分かる。
名前で呼ばれると、距離を置かれている様な気がするんだよね。
「そういえば、湊君。そろそろ結婚相手とかいるの?」
出来上がった目玉焼きをテーブルの上に置いて、母が訊ねた。
お兄ちゃんは、冷蔵庫から取り出してきたお茶を座って飲んでいたが、噴き出し激しく咳き込む。
「……ごほっ! な、何言い出すんですか孝子さん。いませんよ、そんな人っ」
「そうなの? 湊君かっこいいから、世の女の子達が放っておかないんじゃないかしら。ねぇ、奈央」
「う、うん。そうだね……」
私は目玉焼きを食べ始める。
ってか、そんな事私に聞かないでよ。お兄ちゃんがモテるのは、分かりきってる事なんだから。
それを認めるのも嫌なのに。
「奈央こそ、いるんじゃないのか。病院の受付嬢なら、先生とか患者さんとか」
お兄ちゃんが、私に話を振ってきた。
「いないよ。忙しくて、そんな暇ないし」
「そうなのか」
私は、お兄ちゃんしか異性として見れないんだよ。