お兄ちゃん……


「さて、そろそろ行くか。……奈央、先行くぞ」

「ちょっと待って! 私も行くっ」

 目玉焼きを少し残して、私は椅子から立ち上がる。

「奈央、ちゃんと朝御飯食べていきなさい! 湊君も、倒れてもしらないわよ」

「ごめん、お母さん。帰ったら食べるから」

「すいません、孝子さん」

 お兄ちゃんと私は、慌てて家から出る。

 朝御飯は、しっかり食べないといけないけれど、お兄ちゃんと途中まで歩いて出勤するのも私の日課だから仕方ない。

 ご飯よりも大事な物が私にはあるんだ。



「……お兄ちゃん」

「なんだ?」

「さっき、お母さんに言ってた事本当だよね?」

「何が」

「結婚相手がいない、って言ってたやつだよ」
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