蒸発島
二藍はこちらを見て笑った。そして私の手をぐいと引っ張り、一歩進んだ。
「ちょっと、二藍、どこ行くの? まさか……」
「病院への入り口は、島の中心部にある穴の中だとさっき言っただろう。
――なに、そんな顔をするな。これは不思議な水だ。中で息が出来るし、慣れれば快適だぞ」
「そんな水があるわけ……きゃっ」
二藍は私の話も聞かず、大きな音を立てて水の中へと入っていってしまった。私に水がたくさんかかったが、その水は冷たくもなく、熱くもなく――適温でもない。
「もう、二藍!」
こんな怪しげな水の中には入りたくないが、島の真ん中でぽつんと一人で立っている方がよっぽど怖かった。
「ちょっと……こんな所で一人にしないでよ!」
覚悟を決めて、大きく息を吸った。
――そして、水の中へ飛び込んだ……。