蒸発島

「……って、ちょっと待って。今、見舞いに来る人なんていないって言ったよね? それに最初にも、誰でもここに来れるわけではないって……!
 私は来てるよ? どういうこと?」
 もし人間は入れない場所なのだとしたら、私は生きていないことになる。そんな恐ろしいことは極力考えたくないが、普通ならば来られないこの場所に私が来れたのは何故なんだろう。
 二藍は、“そんな時も稀にある”と言ったが、内心気が気でなかった。もっと否定してほしかった、でないと不安が消えない。

 ロビーのあった階はやがて病室が少なくなり、薄暗い所へ来た。管理室や手術室がある。こういう場所は、現世でも怖い。

「ねえ二藍、どこ行くの? もう病室ないよ」
「二階に行くのだ。
 ほら、あそこを見てみろ」
 二藍が指した場所には、入り口にあったような穴が一つ、ぽっかりと空いていた。


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