蒸発島
「穴だ。少し暗いね。下の方がよく見えない」
幅は入り口の穴と同じぐらいで、片手を水平にぴんと伸ばしたら壁に突っかかってしまうほど狭い。窮屈だし、方向転換もし辛い。
「今度の穴は然程長くは無い。二階自体は明るいし、人ももっと活発だ。
一階は静かだっただろう? 入ったばかりの人が多いのだ。
二階からはここに住み慣れた人ばかりだ。風子に会いたがっている人もそこに居る」
――二藍も、そこに居た……。そして何らかの方法で現世に来て、
(私をここに連れ来た本当の理由はなんだろう?)
会いたがっている人が居る――それは本当かもしれない。しかし、見舞いに来る人は稀、
(現世の人間に会いたがっている人はたくさん居るはずなのに、滅多に来ない、いえ、滅多に来られない――)
「風子?」
「え――何?」
「ぼーっとしていた。考え事か? 逸れてもしらないぞ」
二藍は先に穴に入っていってしまった。気を悪くしたのかもしれない。私が考え事をするのは、二藍にとっては困ることなのか? だとしたら何故――。