蒸発島

その日常はあまりにも単純で、生きていくには辛過ぎた。


 *

 もうすぐ夏がこようとしていた。

 暑いような、暑くないような、そんな中途半端な時期。季節の変わり目は特に体が重く、気が乗らない。

 私は三島風子。今年高校受験を控えており、去年の暮れから毎日塾に通っている。つまらない日常だ。
 息抜きにネットを見たりするが、私を満たすようなものは未だ見当たらない。
 いつもと同じ毎日にうんざりしている。明日も明後日も、受験の日までずっとそう思いながら過ごしていくのだろう。

 去年が遠い昔だったように感じる。
 あの時はまだ友達と遊びに行ったりして、毎日を楽しんでいた。
 お婆ちゃんと、飼っていた犬のアイが死んだ年でもある。
 泣いたり、笑ったり。そんな日々もあったんだと、冷めた考えをする冷静な自分がいる。
 こんな自分を時々怖く思うけれど、受験に比べれば大したことはない。

 頭が麻痺しているのかもしれない。長く続くであろう退屈な日々に埋もれて、抜け出そうという気もあまり起きないで、とにかく一日を終わらすことばかりを考える。淡々とした日々に何か成果があったのか。そう思うのはやめた。辛いことは考えない。ただ受験のことだけを思って、一日を消化する。

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