蒸発島
「二藍、よくお聞きなさい」
「はい」
「お前には変わった力がある。それは、現世へ今と変わらぬ姿のまま行くことが出来る力だ」
「それは、凄いことなのですか?」
「うむ。通常なら、現世へ行くと体が透け、動くと体力を大量に消費してしまう」
それは体にとっては毒だと言った。けれど私達はもう死んでいて、今は病院という名の場所にいるけれど、いずれは黄泉に行くことが確定している身なのだ。その身に毒になるからといって、何を恐れることがあるのだろうか。
彼は、現世で彷徨っている人を病院に連れてきてほしいと言った。その意図は分からない。けれど私としても現世を彷徨いたい身なのだ。姿が具現化される力さえなければ、きっと私も同じように現世で彷徨っていたに違いない。
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