蒸発島

 ぶつぶつといつものように小言を嘆いているところに、一人の少女が音も無く現れた。

「またそんなつまんないこと考えてるの?
 そりゃあ駄目でしょ。だいたい君が現世にいけるのは鳩羽のお陰じゃないか。君一人じゃ現世に行けないよ。僕達は珍しい力を持っているけれど、鳩羽が居ないと使い道が無い小さなものだ」
「瑠璃……。瑠璃は苦しくないのか? ……生きたくはないのか?」
「もう死んでしまったんだよ? 生きたいなんて言って生き返れるんなら、僕だってこんな所にいつまでも居たりはしないよ」

 彼女はいつもこんな感じだ。
 瑠璃はいつも突然現れる。女のくせに自分のことを僕といい、彼のことを鳩羽と馴れ馴れしく呼ぶ。瑠璃も特別な力を持っているらしいが、詳しくは知らないし訊いても教えてくれない。彼曰く、私よりも小さな力らしいけれど、それが何に使われているのか、それすらも知らない。

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