蒸発島
「なんでしょうか?」
「お前は――、早く黄泉に行きたいと思うか?」
「思います。しかし、傷がまだ癒えておりませんので」
「そうか――」
彼は椅子をぐるんと回し、私に背を向けた。話す気が無いと見て、静かに部屋を出た。
黄泉では意思が無いと聞く。浄化され、新たな命を歩む手続きをするのだ。
現世か、黄泉に行きたい。いつまでもこの場所に居るのは嫌だ。
違う世界に焦がれ、悲しみは膨らむばかり。
ああ、――あの時、事故に遭わなければ……。今頃は風子の様に、遊びや勉強をして毎日を過ごしていただろうに……。