蒸発島

「え……?」
 幻覚かと思った。
 永遠に続いているかのような廊下を見ていたはずなのに、急に視界に子供が入ってきて――。いつ現れたのか、全く分からなかった。それぐらい、朦朧としていたのかもしれない。
 
 その子は小学生くらいで、性別は――分からない。青い色をしたショートカットヘアで、白いシャツに紺の半ズボン、それからネクタイや光沢のある靴を身に纏っていた為、良い家の子という印象を受けた。

「見つけた。あんたが例の人間だね」
 子供は中性的な声で言った。見た目も声も、どちらも中性的で、男なのか女なのか判断がつかない。

「えーっと、待ってよ。かなり前に名前を聞いた気がする。
 ――そう、そうだよ、確か、風子」
 子供は私の名前を呼んだ。二藍といいこの子といい、何故私の名前を知っているのだろう。
「あの、貴方誰? 何で私の名前を――」
 走り回ったせいで、頭が働かない。もっと尋ねたいことがあったはずなんだけど――沢山ありすぎて、何から訊けばいいのか分からない。



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