蒸発島

「そんなことは分かってるけど……。
 ああ、そうだ。死体を見たらしいよ」
「死体を?」

 風子の居た位置とそこは大分距離が離れているはずだ。

「何故そんな場所に居るのだ?」
「さあ……、目が覚めた時に二藍が居なかったから探してるんじゃないの?
 早く帰りたいとか言ってたし」

 瑠璃は宙を見つめた。

「瑠璃は早く黄泉に行きたいんだな」
「…………。
 僕には意思がないんだ。僕を形成しているものも、ただの飾りでしかない」
「だが……黄泉は恐ろしい所かも知れないぞ? それでも――」
「それでも、だ。生きるも死ぬも同じだ。必ずどこかで存在していないといけないんだ。それは、ここか黄泉か、どちらが苦なのか明白だろう?」

 彼女はきっと、毎日毎日同じ事を延々と頭の中で繰り返し考えているのだろう。
 それは瑠璃の思想とも言えた。


 
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