蒸発島
「露草……?」
私を睨み付ける露草は、先ほどの彼女とはまるで別人で――。
「ねえ、どうやってここに来たの?」
「ふ……二藍に連れてこられたの……」
動揺が顔に出る。露草は一瞬何かを考えていたようだが、やがて、
「能力は?」
とだけ言った。
「能力って何?」
「とぼけないで! 何のために能力の無い人間をここに連れてくる必要があるのよ!」
露草の声が耳にきーんと響いた。
「本当に知らないの。もう訳が分からない! 私は早くここから出て行きたいの!」
露草の、幼いながらも寒気がする怖さに耐えかねて逆上した。