蒸発島

「ふーん……」
 露草から笑顔が消えていた。あんなに潤っていた目も冷たい眼差しに変わり、子供では到底出来ない顔だと思った。
 それは、信じていた人間に裏切られた時の、呆れや絶望感の入り混じった静かな怒りと似ている。

「な、なによ?」
「別に……知らないならいいの。そっか。そうよね。そういうこともあるのね……」

 ぶつぶつと何かを呟いて、去っていこうとした。

「露草、待ってよ! 入り口まで案内してくれない? 早く帰りたいの」

 露草はゆっくりと振り返る。
 その顔からはもう怒りは感じられなかったが、哀れんだような瞳が私を映していた。

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