蒸発島
「風子は帰れないよ。――今は、まだ」
「……どうして?」
不安が過ぎる。もしかしたら一生現世には戻れないのではないかと、何度思っただろうか。それでも極力考えないようにしていたのは、不安を振り払うための精一杯の強がり。その強がりが今、露草によって打ち砕かれた。
「……本当に何も知らないのね。でも仕方ないわよね、ここに居たって何も知らないで黄泉に行く死人も居るもの、現世の人間が知る術なんて、ほぼ無いに等しいわ」
「二藍や瑠璃も、露草と同じように訳の分からないことを言っていた。
貴方達の知っていることってのは――例えば能力だとか何とか言っているけど、それはそんなに重要なことなの?」
「重要であると判断したから私は拘っているのよ。興味ない人はどんどん黄泉に行っちゃうわ」
何か確信に触れる返答が欲しかった。