蒸発島

 *

 そこは海だった。

 明るい空に、光り輝く海。私達の立っているところは砂浜で、四方八方が海に囲まれていた。

「ちょっと、なによこれ。どこなの? どうやって来たの? どうやって帰るの?」

 先ほど二藍が開けたはずの扉が無い。扉どころかバーも無いし、見たことのない場所だ。
 把握しきれない現状に耐え切れなくなって、二藍の手をきつく握る。この子が居なくなったら、私はここで一人きりになってしまう。よく分からないけれど、置き去りにされるのだけは避けたかった。

 パニックになりながらも、二藍の存在を確認する。
 温かい手の感触、強く握れば、二藍も握り返してくれる。夢にしては意識がはっきりしているし、手の感触がリアルだ。

 辺りを見回す。
 私達の立っている砂浜は先の方まで続いているが、目を凝らすとやがて途切れているのが分かる。砂浜しかない小島だ。島の中心部らしき場所に、ぽっかりと穴が空いている。ドーナツ型の島なんだ。

 それ以外は何も無いので判断のしようがない。

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