体操座りと救世主

でも自分には龍の呪いを解く力はない。

なんたって偽者なんだから。

だったら知っても辛いだけだ。

マナは戸上の皮膚を見て見ぬフリした。


それからしばらくして、文太がマナに龍のことを聞いてきたとき、ドキッとした。

でも文太が探しているのは本物の愛であって、偽物の自分ではない。

少し悲しくなったが、平常心を保ちながら知らないフリをした。


その翌日だった。

駅の近くの店でショッピングをしていると、文太が大人の女性とデートしているではないか。

それを見たマナはショックが隠しきれなかった。

しかし、聞こえた会話がおかしい。

聞き耳をたてると、女の人は文太をアイと呼んでいる。

マナはひとつの可能性に行きついた。

本物の愛は、文太なのではないかと。

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