咲かない桜と散らない梅
起~始まりの記憶~
見上げた空は、曇り空だった。
見下げた地は、積み重なった人間だった。
俺は気付いたらここに居た。
この場所に座り込んでいた。
持っていたのは、自分の背丈よりもある長刀。
それだけだった。
他には何もない。
何も持っていない。
それしかなかった。
「………腹へった。」
空に向かって呟いたら、カラスが飛んだ。
「――あれ?驚いたなぁ」
横から声がしてきて目をやると、一人男が立っていた。
「まさかこんな所に子供が居るなんてね。」
ソイツはゆっくり俺に近付いて、人が良さそうな微笑みを浮かべたまま俺を見下ろした。
「座り込んでどうしたの?怪我でもした?」
「………腹へった。」
素直に言ったのに、男は目を丸くした後、声を上げて笑った。
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