とけない気持ち
ある日、ひさしぶりに優が家にきた。

放課後だったけど、着替えたらしく私服で。


「ひさしぶりだわー、遥の家」

「上がっていいぞ」

「はーい。お邪魔しまーす」

優は俺の部屋に入ると、前みたいにソファを陣取ったりせず、どことなく緊張気味だった。

「優?」

「ん?なに?」

「いや、珍しく来たから用事かなー、と」

「あー、用事だね」

「ん、何?」

「聞きたい?」

「いや別に」

「おいっ!そこは聞こうよ!」

「仕方ねーな...」

「え、そんな嫌々聞くなら言わない」

「あ、嘘です言ってください気になります」

「んー、遥さ」

「うん」

「私を彼女にしない?」

数秒見つめあったあと、優はいつものように茶化したりせず目をそらした。

「優」

これは、言わなきゃな。

結衣のこと。

「うん、何?」

「俺は優が好きです」

優は何も言わず、続きを促した。

「でも俺、付き合ったりとかできない」

「どうして?」

「俺、中3の時に付き合ってた子がいて」

「うん」

「結衣って言うんだけど、その子がさ」

「うん」

「いきなり、消えちゃって?」

「消えた、って?」

「ほんとに、言葉通り消えたんだ。家は空き家だし学校来ないし」

「引っ越したってこと?」

「先生はそう言ってたけど、俺は違うと思うんだ」

「何で?」

「わかんない、けど...」

「うん、それで?」

「結衣、親に虐待されてたみたいで、それも関係あるのかもしれない」

「.....それ、先生に言ったの」

「いや、言ってないけど」

「なんで言ってあげないの!?」

「結衣が、嫌がって泣いたから...」

「結衣ちゃんのせいにするの?」

「.....っ」

「いい、続けて」

「それで、俺、結衣のことまだ好きで」

「戻ってくるかわかんないんでしょ?」

「.....うん」

「でも、好きなんだ」

「うん」
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