甘い囁きが欲しい



「お腹、痛いなぁ」


午後、休憩をもらい自販機の前で胃をさすった。
この弱い胃との付き合いも何年になるだろうか。

こいつのように私自身も素直だったら、な。
なんて。



「調子、悪いの?」




「部長・・・」
「無理することないよ、大丈夫?」



「大丈夫です、ありがとうございます」

となりに並んだ部長を見上げた。


不意に昨日のぬくもりを与えてくれた人を思い出してしまうのはなぜだろうか。



「顔色、悪い」


ミルクティーを買った彼の自然な動きを眺めて、珍しい、そう感じる。
いつもブラックコーヒーを飲むのに。

「はい、あったかいもの飲んで。
無理しないこと」

差し出された缶を両手で受け取ると、おもわず目を見つめてしまう。



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