甘い囁きが欲しい
「あ、あれ?え、ありがとうございます」
自分へ差し出されたものと部長の顔を交互に見て、ようやく意味を理解した。
小さく笑った部長の柔らかな笑みはやっぱり安心する。
私の指導をしているときから、この笑みを見ると私は緊張が和らいだのだ。
「最近、元気ないみたいだからさ」
壁によりかかるようにして、こちらに向き合った。
「そ、んなこと・・・ないですよ」
はっきりと言い切れなかった。
しまった、そう思ったときには部長の手が伸びてきて肩をぽんと叩かれた。
「よし、金曜日は仕事終わったら俺と飯に行こう。
なんでも好きなモノご馳走するから」
「・・・はい」
部長の言葉はまっすぐに、そして濁ることなく響いてくる。
なぜだろう。
私は、部長になんて話をして部長は私とご飯を食べるんだろう。
ぐるぐると回る思考とツキツキ痛む胃を押さえ仕事へと舞い戻った。