甘い囁きが欲しい
小さく息を吐きだした、そしてグラスに残ったビールを煽る。
「よし、今から部長呼びは禁止な」
「いきなり、無理ですよ」
「うるさいですー、部長って言うたびにキスするよ」
「え、キスッ!」
おもわず大きくなった声に、慌てて口を塞げば笑いを耐えるように肩を揺らす姿。
「キスしたかったら、いつでも部長って呼べばいいよ」
「も、そんな笑いながら言わないでくださいよ」
「やー、遠慮しないでね?」
湿った空気を飛ばすかのように、ことをうまく運ぶ姿は仕事のできる部長そのもの。
そして、思ったよりもたくさんの話をするということ。
普段の部長は、周りを穏やかに見守っていたイメージで。
ちょっとした違いが新鮮だった。