甘い囁きが欲しい


「お疲れ様。今度約束のご飯にでもいきませんか?
 
 うわー・・・」


仕事上がり、いつもは疲れから帰るまでの道のりが辛く感じるのに。
メールを見ただけで、気持ちが上がっていく感覚。


おもわず、スマートフォンを画面を指でなぞって、言葉として、実感する。


松木さん。



「お疲れ様です、今仕事上がりです。
 ぜひ、いつが都合いいですか?」

本当なら、わざと時間をおいて返事をしたほうがいいのだろうか。
でも、そんな駆け引きみたいなことは苦手だし、何より待ちきれない。


だから、ダメなのだろうか。


友人にも言われるんだ。
真っ直ぐすぎる、それは時にマイナスよ、と。

綺麗に笑った友人たちは、どんな上手な恋愛をするのだろうか。

どうやって、あんなに素敵な恋をするのだろうか。


私には、何が足りなくて、どうしたらいいのか。

未だによくわからない。

流れ込む思考を遮るようになった、メールの着信音に自然と反応して続けられるテンポのいいやり取り。



心地いい、寂しくない。
ひとりじゃないと感じる瞬間。



「週末、ご飯、・・・デート、かな」



取り付けられた約束が、私の気持ちを上げて、くすぶった気持ちに蓋をする。



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