甘い囁きが欲しい
それからというもの、わたしと松木さんは順調とはいえない。

何段か飛ばしの恋愛になっていた。
私が思う彼への気持ちと


きっと、彼への気持ち。


微妙に交わらなくて。


無理に重ねようとすれば、いなくなってしまうような。

そんな、曖昧な関係。



「最近、どうなの?」

定時を回った時刻、目の前のデスクに座る同僚に声をかけられた。


「うん・・・」
「彼氏と、どうなの?」



「彼氏・・・」

世間的には、彼と私の関係を恋人同士というのだろうか。


私が思い描いた、そして過去に経験してきた恋愛とは少しも一致しないこの恋。


むしろ、こんな関係を恋人と言っていいのか、私には疑問で仕方がなかった。


でも、ただ、気軽に言えるはずないという、それだけは自覚していた。


「うん、忙しいみたい。
 それにね、私は好きだけど彼女なんかおこがましいよ」


素直な気持ちを言葉にしてしまって、ひとつ後悔。
なぜ、言葉にしてしまうとこんなにも自覚をして、苦しくなるのだろうか。


胸を針でチクチクとつつかれる。



「会えないの?」




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