甘い囁きが欲しい
水曜日の女
「ごめんね、待たせたね」
「そんなことないですよ」
待っているあいだも、いつ彼が来てもいいように背筋を伸ばして。
仕事あとの化粧直しも頑張って。
少しでも綺麗に見えるように
緊張しながら待つ私を彼は知らないだろう。
「お腹すいたー」
「お疲れ様です、ご飯なにたべますか?」
自然と隣に寄り添うように歩き、自然と体が触れ合うけど不自然には感じない。
そんな距離の取り方が上手なのだ、この人は。
なおかつ、車が通る側を自然と歩き
寒くないかと私を心配して
料理のメニューを考えながらいつも違う店へとエスコートする
ここまできたら、逆に不自然なのだろうか。
女性慣れしていて、たくさん彼女がいたことも会話の内容から伺える。
「いつも、長い時間じゃなくてごめんね」
「サークル忙しいなら仕方がないですよ」
「優香ちゃんは優しいよね」
ニコニコと笑う笑顔に、つられて笑えるのに、ずっとチクチクする。
「土日毎回サークルにとられてさ、なかなか休みもなくて」
そう、私たちが会うのはきまって週中。
それも、前日もその日も、そして翌日も。
仕事