千恋☆ロマンス Ⅰ 【かなりの加筆修正により、若干ストーリーが変わります】
突然の転校生発言にざわつく教室。
浮き足立つ生徒とは裏腹に、彼の声はかなり落ち着いていた。
そして、扉を静かに開けて入ってきた転校生に思わず皆──勿論私も魅入ってしまったのだった。
その容貌が、あまりにも整っていたから。
女子も羨むような、黒くてさらさらの髪。
背は長身で、隣にいる割と身長が高い先生を余裕で越している。
凄く綺麗だけれど、ざわつく教室なんかに興味はないような、何処か凄く遠くを見ているような雰囲気のある瞳が印象的だった。
なかなかに……凄い転校生だなぁ。
ぼうっと彼を見ていると、先生が黒板に彼の名前を書き始める。
皆、静かにそれを見つめる。
カツカツと刻まれていく文字。
チョークの音が収まると、彼は微笑んで言った。
「東条皐月(とうじょう さつき)です。変な時期からの編入だけど、仲良くしてくれたら嬉しいです。よろしくね。」
わお、至極爽やか。
何というか、“王子様”って感じの人だ。
きっと……うん、女子からのあだ名は❮プリンス❯に決まりかな。
「はい、東条挨拶ありがとう。東条は家庭の事情で転校してきたそうだ。えー、まだ学校の事は分からないと思うから教えてやれ………………まぁ言わなくてもするか。」
ちなみに苦笑いで付け加えた最後の言葉は、女子を見てのことだった。
先生は、昼休みになった途端、彼の元に女子が殺到するのが目に見えたんだろう。私も見えた。