千恋☆ロマンス Ⅰ 【かなりの加筆修正により、若干ストーリーが変わります】
チャイムが鳴り、昼休みが訪れると、彼の席の周りには人垣が出来た。
…………ALL女子の。
「とーうじょうくん♡」
「どこから来たの?」
「学校案内してあげるよー♡」
女豹と化した女子は彼の方へ一目散。
一見清楚系女子の集まりにも見えるけれど、瞳の奥にはメラメラと間違いなく闘志を燃やしているよね。
…………人は見かけによらないってやつかな。
私は、別に興味ない訳じゃないけど女子の群れに近づく気がしなくて。
机に突っ伏せていたら、上から声をかけられた。
「皆東条君にメロメロだー。」
『梓。』
「とーわ、ご飯食べよー。」
自分の席から持ってきた椅子を私の机の横に置き、慣れた様子で座るのは、私の親友で幼馴染みの水口 梓(みずぐち あずさ)だ。
親友……いや、大親友かな。
髪の毛は黒髪でふわふわ、肌は真っ白。目も大きくて、動く姿はまるで子猫のように可愛い。
要するに、超美少女の彼女。
『梓は興味ないの?転校生。』
「梓程の美少女がきゃーきゃー言ったらイメージダウンでしょ?」
ただし、ナルシで性格に難あり。
……まぁ梓ほど可愛かったら自意識過剰でもなんでもないよね。
それに長い付き合いでもう梓のワガママにもナルシにも慣れてるし、なんてことないんだけど!
さーてと、ご飯ご飯。
ワクワクでお弁当箱を開ける。
『今日のご飯はー…………じゃん!………………卵焼きぃ……。』
卵焼きは嫌いじゃない。
むしろスキ。
でも、お母さん、お弁当卵焼きオンリーは厳しいかな……。
「今日髪上手く巻けて梓超かわいい……。」
『オンリーか……。せめて醤油!醤油があれば卵かけご飯のミスった感じになるのに!』
会話はまったく通じてない。
しかしながら長年の付き合いである二人の会話はこれで成立するのである。
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「今日も本当かわいいな、神内さんと水口さん……。」
「水口さんは何をそんな満面の笑みなんだ?」
「きっと……転校生がイケメンだからだよ……。」
「神内さんはなんであんなにかわいく膨れてるんだ?」
「きっと転校生が女子に囲まれてるからだよ……。」
「「「「イケメンは滅びろ!」」」」
梓は自分の可愛さにテンションが上がり、
永遠子は醤油ほしさに膨れている事も知らず、男子たちはイケメン転校生に闘志を燃やしたのだった。