千恋☆ロマンス Ⅰ 【かなりの加筆修正により、若干ストーリーが変わります】
「あのさぁ、永遠。」
さっきまで携帯の鏡を見ながら笑っていた梓が真顔になった。
「どうしたの?」
話を聞こうとした所に後ろから手が伸びてきた。
「律子さんの卵焼き、ちょうだい。」
振り向かなくても声で、誰だか分かる。
私の卵焼き(だけ)弁当の卵焼きをつまんでぱくっと食べたのは、私のもう一人の幼馴染み、水口玲(みずぐち れい)だ。
「玲君ってば遅いよー。もう昼休みだよ?」
「朝起きた。そしたら昼になってた。」
もぐもぐもぐと、次々とお弁当に手を伸ばす辺り、きっと朝起きてすぐ来て、朝食も食べてないんだろうなぁ。
玲はかなりののんびり屋だ。
今だって、制服のボタンが結構とまってなくて、すごい謎の色気が出てるけどこれは他意は無くて、ただ眠くてのんびりしてるから。
いや……のんびり屋じゃなくて面倒くさがりなだけかな。
『でも、玲が遅刻したの、ラッキーだったかもね。』
「ラッキー?……あー、そーだねー。ナイス惰眠ー。イケメン転校生が、全員連れて行ってくれたんだー。」
そう、超絶可愛い梓と双子である玲は、他の人には起こりえない、物凄く大変な事態に日々直面している。
それが今日は、❮王子様❯の登場で回避出来た……かもしれないねと、梓と頷きあった。
「そういえば今日はまだ……襲われてない。」
『ちょっと言い方!それだとあの子達にあらぬ容疑を着せてるから!』
「んー、割と事実だよねぇ。あの勢い、玲くんの制服を剥きに来てるとしか思えないしー。」
各々《L・O・V・E・玲サマー!》と騒ぐ女子の群れを思い出して話している。
そう、私のもう一人の幼馴染み、玲はめちゃくちゃモテるのだ。
まあ梓と同じ遺伝子だもん。美形なのは確実。モテないはずがないんだけどね。
少し長めの黒髪にアイドルを思わせるような甘いマスク。
目元にある涙ボクロが絶妙にかっこいい。
身長も170あるし、剣道の有段者であるという徹底したイケメンぶりである。
ちなみに玲のやる事なす事全てが裏目に出て、今の状況を作り出してしまった。
可愛すぎる子供だった玲は、よく攫われかけた。だから自分の身を変質者から守る為、剣道に打ち込めば、モテる。女子が苦手だからと黙っていれば、クールでかっこいい!と大評判になる。
こう考えてみれば、玲もある意味かわいそうではあるなぁ……。
『あ、そういえば。梓、何か言おうとしてたよね?』
「ああ、えっとー、あのねー?梓の勘違いだといいんだけど、今日空気重くない?」
普段と何も変わらない口調で梓が告げたのは、《秘密》に関わることである。
空気が重い───。
それは普通の人なら分からない事。
でも、《神内》に近づきすぎた双子には分かる事。
「俺も思った。今日学校に入った途端、外とは空気が変わった。」
『あちゃー……転校生効果かな……。』