お茶の香りのパイロット
フィアが格納庫に行ってみると、アルミスは痛みどめを飲むために部屋にもどったときいた。


(部屋にもどるなんて、かなり痛いんだわ。)


コンコン・・・


「はい、何か起ったのかい?」



「いえ、フィアです。カイウさんからおやつを持っていくように言われてきました。」



「あ、どうぞ。はいって。」


「お部屋にいるなら、これ食べてください。
では・・・」



「待って!フィア・・・待ってくれ・・・うっ・・・っ・・」


「アルミス!やっぱりかなり痛むんでしょう?
なのに、どうして仕事ばかりするんですか。」



「私は痛いって言えるけど、あの機動性人形の被害にあった人は痛いも言えなくなってしまってるから。
だから早くあれをなんとかしてあげないと。」


「だけど、今みたいなやり方してたらあなたが死んでしまいます。
せめて指示するだけとかなら、寝た状態とかモニター越しでの連絡で進んでいくんじゃないんですか。」



「そうかもしれないね。だけど、それは私は望まない。
直接見ていないと、いいものができそうにない気がして。

けど、フィアにそう言われたら、私も開発のために自分をいたわらないといけなかったなって反省してしまう。
だめだね・・・かまってもらわないと悪い方に突っ走ってしまうなんて。」



(それで・・・カイウさんが・・・。)

「なぁんだ・・・アルミスが無謀なのは私にかまってほしかったからなのね。
仕方ないわね。食べ終えてから、お薬の交換もつきあってあげるわ。」


「すみませんねぇ。ああ~~~チラっとすれ違っても、いつも素通りばかりされてたからもっと仕事しなきゃいけないんだなって思ってたけど・・・私の勘違いだったんですね。」



「えっ!?私のせいで仕事づけだったの?」


「かっこよくかばったつもりだったのに、口きいてくれないからねぇ・・・かなり弱ってたんです。
勝ちにいけないから、男として最低って思われたのかもって・・・。」


「そんな!あの状況では無理です。
それに私がいちばんドジったんだし・・・。
ごめんなさい。
機動性面でつらいって思ったときに向かっていかずに素早く撤退していれば・・・。」



「無事だったんだからいいってことにしましょう。
それより・・・食べさせてくれないかな。
両腕が痛くてね・・・。

ついでに、痛み止めの薬と水を口移しでいただけるとありがたいんですけど。」


「あ、口に爆弾を放り込めばいいですね。」


「う~~~~ん・・・真面目な人ですね。」


「はい、私はアルミス様はとても紳士でいやらしいジョークは言わない方だと尊敬していますから。
うふふふ。」



「そう・・・。私は優秀な科学者でクールなパイロットですからね。あははは。

フィアに甘えついでに・・・1つ重要なお願いをしてもいいですか?」



「重要なお願い?」


「ええ、今開発している機動型のドールとそれを指揮するロボットのための資金提供とパイロットを世話してくれる人物に会うっていう仕事なんですけどね。

カイウだけだとちょっと不安なのでね。」



「それって重要任務じゃないですか。
あ・・・カイウさんの護衛とパイロットの相性を見るってわけですね。
わかりました。カイウさんに同行していってきます。」



「ありがとう、お願いします。
くれぐれも気をつけて。
仕事以外のお誘いとか、カイウが同席していないディナーとかには絶対行かないでください。」



「ずっとカイウさんと一緒に居ろってことですか?」


「あ、プライベートルーム内はひとりでいいし、女性だけの席はかまいませんけどね。
資金を提供してくれるマーティーという男とそのまわりにいる男たちはかなり積極的に女性を誘う人たちでね・・・私が言おうとしてることわかりますか?」


「あ、誘いに乗るなってことですよね。
危ない人たちってことで・・・。」



「そういうことです。
できるだけ日数をかけないでもどってきてほしいんですけど・・・それはカイウに頼んだ方がよさそうですね。
長くなればなるほど心配で仕事なんて手に着きませんから。」


「え・・・。」


< 12 / 60 >

この作品をシェア

pagetop