お茶の香りのパイロット
フィアがアルミスに薬を飲ませると、アルミスはフィアの手をつかんだまま、間もなく眠り始めた。


(ずっと緊張してがんばっていたみたいね。
みんなに頼られてその期待にずっと応えてきて・・・自分が弱音をはく相手がきっとほしかったんだわ。
うん、資金提供の相手がどんなスケベなおっさんでもがんばらなきゃ!)


アルミスの眠りが深くなったことを見届けて、フィアは持ってきたおやつの食器を持って店へともどっていった。


店にもどってカイウに任務のことを言うと、カイウはフィアが店にもどってくるのが遅かったことに触れもせず笑顔だった。


「眠ったか・・・よかった。
手のかかるぼっちゃんだろ?

やっぱりアルミスの世話は君にやってもらうのがいちばんいいな。」


「えっ・・・そんな。」


「アルミスのお気に入りなのは嫌かい?
この基地の女の子からは羨ましがられる存在だと思うけど。」



「こ、困ります。私は本来学生だし・・・お気に入りなんて言われても、何をどうしたらいいのかもわからないし。」



「あははは・・・悪い、言い方が悪かったね。
ただ俺はね、ずっとアルミスを見てきて彼が心を預けられる人がいればいいのにって思ってた。
俺もナオヤもサポートはがんばってるつもりだが、それは彼の寝室の中やプライベート部分以外のところだからね。

彼が痛い、つらいって弱くなってしまったときに手を差し伸べてほしいんだ。
君のことはほんとにあいつにとって特別なんだと思うし、君といるときのあいつの笑顔は最高だ。
いくら巨乳で筋肉質な女性好きでもとくに君は特別みたいだし・・・よろしく頼むよ。」


「あの・・・アルミスは巨乳で筋肉質な女性が好きなんですか?」


「あれ。知らなかった・・・?あ・・・ははは。
まぁ聞かなかったことにしてくれ。
さあ~~~仕事、仕事ぉ~~~~♪」



フィアはとにかく自分がアルミスに嫌われているのではないとわかればそれでいいと思った。


(どんな感情を持ったとしても、平和な世の中がくればアルミスはきっと王子様にもどるんだろうし。
私とは住む世界が違うものね。

だけど・・・それでも、他のみんなもそうだろうけどいっしょにがんばっていきたい。
私でできることなら何でもしてあげたいな。

アルミスの心なんて・・・まだ何にもわからないよ。
話をして、ほっとしてくれればそれでいいような気もするし、私の知らない重い重い荷物みたいなものをもっと吐き出してほしいとも思うけど、それは私からは言えないよね。)





そして、3日間フィアはアルミスの身の回りの世話をしながら店を手伝い、4日目の早朝にはカイウと出発することになった。


「じゃ、始業前に出るよ。マーティーの秘書にさっき電話したら午後から俺たちのためにスケジュールをあけてくれてるらしいから歓迎はされるみたいだし。」


「ああ、資金面はすべてカイウに任せる。とにかく無事の帰還をね。
それとフィアが変なムシにくっつかれないように気をつけてください。」


「お。おい・・・。心配はそっちか。」


「フィアはほら、戦うしか知らない子だし、あっちではドレス姿だっていうし、ドレスは胸がどうしても目立ってしまう衣装だし、遊び慣れした大人の男が手練手管で誘ってきたらウブなフィアがどこに連れていかれてしまうかもしれないじゃないか。

あ~~~やっぱり私が直接行った方がいいんじゃないかな。
パーツの組み上げとかなければ・・・設計変更の心配がぜんぜんなければ・・・スピードテストがもう完了していれば・・・。うう・・・。」


「アルミス!さっきから黙ってきいてれば、私がすっごい何もしらない子でバカみたいじゃない!
ご心配はいりません。ちゃんとカイウさんといっしょにいるようにしますから。

ドレス着てるときだってカイウさんにエスコートしてもらうから何一つ心配いりませんってば。」


「それが心配だって・・・。
そのカイウだって私と1つしか違わない年上の男だからね、ドレス姿の君にムラッときて部屋に乱入してしまうかもしれないでしょう?」



「こ、コラッ!俺をおまえといっしょにするな。
これはおまえを応援して平和を願う者たちの希望のための任務だ。

フィア嬢は責任をもってエスコートさせてもらうことにするから、1日も早くおまえは傷を治しておけよ。
もどったら新しいパイロットの訓練とか機体の仕上げに入るんだからな。」


「わかってる。・・・それでもフィアがせっかく朝に夜にいてくれるようになったのに・・・。」


「おい、女々しいぞ。あまえてばかりいても嫌われるってもんだ。
そろそろ行く。さぁ、フィア操縦頼む。」


「ラジャ、アルミス、行ってきます!」


2人は改造セスナ機でマーティーのいるオービーコーポレーションの本社ビルへと向かうのだった。

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