お茶の香りのパイロット
改造セスナ機にはマシンガンなどの銃撃武装と不時着時のボディ強化システムなどの用意をしていたが、近隣にマーティーの声がかかっていたのか、到着までにカイウたちが攻撃を受けることはなく、無事にビルの裏手500mほどのところの簡易滑走路から地下格納庫まで到着することができた。


案内人によって本社5階の小会議室へと通されるとすでにスーツを着た男性が2人待ち構えていた。


「予定通りの到着でよかった。いらっしゃい、カイウにフィア。」


「あ、はじめまして。フィア・ライミアスです。(名前をしっかり把握してるんだわ・・・さすがね。)」


「俺が以前お会いしたときから、ますます発展したものですね。」


「まぁ、下種な話になるけれど、戦乱の火はまだまだ続いているからね。
うちのような本来自動車会社の部品工場は、別の利用のされ方をしてるんだよ。

それがわかっていて、うちも商売をしていかなければ社員の生活が成り立たないしね。
だが、代表としては本来のビジネスを展開して儲けを生み出したいと思うわけで、君たちに協力することにしたんだ。」


「そうらしいね。で・・・資金提供は先日から見せてもらった書類どおりの額でOKですか?」


「ああ。契約書を交わしたらすぐにアルミスの口座へ送金しよう。
それから、補充パイロットについてだが・・・こいつを連れていってやってくれ。」


「ディーナ・クオル・オイビングです。
元ウィウス空軍に所属していましたので、スピードには慣れています。」


「ほぉ~カッコイイな。こりゃ、アルミスがやっかむかもしれないな。」


ディーナはブルーグレーの男性スーツをパリッと着こなしていて、身長はカイウくらいだから男性ではそう高くはない。
椅子に座っている状態でも美形でスタイルのよさははっきりとわかる青年だった。



「ああ・・・きっと誤解されているから伝えておくが、ディーナは私の従妹で21才の女性だからな。
ドレスより、男物が好きな男装の麗人なんだ。」


「え、ぇぇぇえええええーーー!女性っーーーですか。
う、うそ・・・こんなにスーツが似合っていて・・・背が高い女性?」



「素材はいいのに軍にいたせいもあってか、男を見下しているところが多くてな。
こういう格好をしているんだよ。
ちなみにパーティーでも男装してることが多くて、僕がエスコートすることもできない困ったヤツさ。

間違われるのはいたしかたないのだが、パイロットの腕は優秀だしアルミスから連絡を受けたときに協力したいと真っ先に申し出たのは彼女だからこういう出会いを用意したというわけだ。」



「そうだったんですか・・・それじゃお礼をいわなきゃ。
ディーナ、ご尽力いただいてありがとう。それとパイロットの志願もありがとう。」


「いえ、私も平和を願うひとりとして、やれることをやりたかったのです。
それも、あのアルミス様が指揮をとっておられるチームに参加できるなんて願ってもないことですから。」


「でも・・・アルミスは女の子は機動型で戦わせたくないって・・・。」


「あなただって戦ってるんじゃないの?
予備学校の学生が戦えるのに、軍人だった私がフォワードで戦わないでどうするんです?」


「す、すみません・・・。優秀な方に失礼ですよね。
ただ、アルミスが女の子が怪我をするようなことになるのは嫌だっていつも言うから。」


「お優しいアルミス様なら当然のお言葉ですね。
でも、私の能力を見ていただけば、安心してもらえると思いますわ。
それに、戦闘中は男も女もないはずですしね。」


「そうですね・・・。」


「じゃ、じゃあ交渉成立ってことで。
俺はすぐに基地に連絡して、待ってるみんなに喜んでもらうとしますよ。」


あまりにあっけないほどの資金提供と新パイロット補充の話し合いは終わった。
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