お茶の香りのパイロット
ラーガにそう言われてアルミスは目をこすってよく前を見ると、フィアが少し眉間にしわをよせて目を閉じている。


「えっ、ま、まさか・・・うわぁあああ!!!完全に責任問題になってしまった。
まだ未成年の彼女に手をつけてしまった・・・。

ああ・・・宝玉の力もあわさって大変なことになりました。
で、宝玉はどうしてしまったんだろう?」


「胸に手を当ててみろ。」


「あっ・・・私のところに。フィアが私にもどしたんですね。」


「フィアを大切にしてやれ。フィアのまごころがおまえの姉の宝石から悲しみをやわらげて、おまえにもどしてくれたのだ。」


「そうですね。フィアが正気にもどったらプロポーズしなくては。」


「勝手にしろ!たぶん今は受けてくれんだろうがな。ぶはは。」


「嫌なことを言いますね。でもたぶん今の情勢であのドールたちとの戦いをひかえていれば受けてくれないでしょう。

それでも私は人々を守り、フィアも守っていいお婿さんになれるようにがんばらないと!」


「おまえがいいお婿さんになるのはどうでもいい。
とにかくおまえの今、やるべきことを早くこなせ。

ワガンは優秀なパイロットの素質がある。
彼の機体を仕上げるんだ。

それから・・・これは予感なんだがな・・・。」


「ん?なんだ・・・口ごもるのか?」


「近いうちにディーナと話ができそうな気がするんだ。」


「そ、それは・・・彼女が深く悲しむような目にあうってことかい?」


「ビジョンまでは出て来ないが、宝石を手にいれて俺と話せるようになるだろう。
しかし、それではドールとの戦いが・・・・」


「間に合わないな。
わかった。ワガンに訓練してもらうように頼むことにするよ。

それと・・・ラーガいろいろ話してくれてありがとう。
記憶を消されたことは感謝するよ。

これからも嫌がらずに私に助言してくれ。とくにフィアのことを・・・ね。」


「ほんとにおまえは王様の器じゃないやつだな。
しっかり精進しろ!」



ラーガがそういって、まるで通信回線が切れたように会話がなくなると、フィアが声をあげた。


「あ、ああ、アルミス・・・な、なぜ私の中に・・・!!」


「おぼえてないの?君が私に宝玉を返してくれるために、ものすごく色っぽく誘ってくれたんですよ。」


「う、うそよ。私はそんな・・・誘うなんて。
でも、お願い、もうやめて。私、もどらなきゃ。」


「だめだ!結婚式をすぐにあげられない分、いっぱい結ばれないと。
フィア、愛してる。
少なくともあと2時間は俺と特訓だからな。

そのくらいならみんな察してくれて祝福してくれるだろう。」


「ちょ、ちょっとぉ。なんで・・・口調まで変だし。」


「ああ、みんなのところにもどったら姉口調にもどるよ。
今は、君を支配したい傲慢な男に徹するつもりだから・・・。

俺の過去を愛したのなら、今の現実の俺を愛せよ、フィア。」


「あ、あ、アルミス・・・なんかすごく違う。
でも・・・男っぽいアルミスもいいかも。」


「だろ?
制限時間いっぱいまで俺を感じろ、いいな。」


「は、はい。」


もう2人の間に大きな光が飛び散ることもなく、2人は王子でも戦士でもない時間を幸せに過ごした。
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