お茶の香りのパイロット
翌日、ディッドは発進できなかった。
ディーナのシンクロと戦闘訓練はできていたが、アルミスのディッドの最終調整が間に合わなかったためだった。


「ディーナ、すみません。
今日は偵察任務でもありますし、あなたは控えていてください。

いいですね。これは命令です。」



「はっ、上官の命令とあらば了解です。」


「ご理解ありがとうございます。
もどったら、速攻で丁寧に調整させてもらうから、楽しみに待っててくださいね。」



「アルミス様・・・。」

(なんてお優しくて、かわいらしいお言葉をかけてくださるの。)



アルミスとワガンとフィアは機動型ドールが暴れまわっていたという町、トキムへと着いた。


「トキムからは撤退した後のようですね。」


「偵察と聞き込みだけはしてもどりましょう。」


アルミスはワガンと聞き込みを始め、フィアにはアフィニに待機を命じた。


フィニが誰かに狙われているというラーガの言葉が気になっていたからだった。



トキムの町の西の端でアフィニは待機していたが、30分ほどしてアフィニの警報が鳴り響いた。


「警報ですって・・・突然なんで?」


「敵は地面からです!」


「地面!!」



アフィニをあわてて空中へと飛び上がったとき、地面から突然機動型ドールが3体とびだしてきた。


フィアは周りに誰もいないことを確認していたので、とにかく時間稼ぎをするようにワガンに応援を要請しながらドールから逃げることにした。


「これなら、ワガンさんのヤーガンがすぐに駆けつけてくれるわ。
それまでなんとかもたせなきゃ!
ドールたち、みんな私についてくるのよ!」


アルミスとワガンがフィアの逃げ回っている西の端まで3分というところまで近づいたとき、ヤーガンと色違いの機体がアフィニの前にたちはだかった。



「ディーナさん・・・。」


「いいところにきてあげたわ。あなたひとりで困ってたんでしょ。
私がお人形なんてひねりつぶしてあげるから、じっくり見学していなさい!」



「でも、ディッドって最終調整がまだなんじゃ?」


「うるさい!ナオヤが調整してくれたから大丈夫よ。」



ディッドはあっという間に2体のドールを倒すことに成功した。」



「どお?あと1体で終わりよ。ワガンの登場もいらないな。」



そういってディーナが最後の1体に近づいたとき、突然ディッドの下半身が崩れ落ちるように傾いて動けなくなった。


「しまった!」


「ディーナさん、危ない!」



フィアはアフィニでディッドの前に立ちはだかって銃を構えたが、敵の姿が見えずにいた。


気がついたときにはアフィニにドールが体当たりをして、アフィニは弾き飛ばされてしまった。



「きゃあ!!!!」


「フィア、どうした?たてなおしなさい!
逃げていたのにどうしたんですか?」


「逃げられなくなったんです・・・すみません。」



フィアはディーナが動けなくてかばっているとは言えずに、アフィニをなんとか立て直そうとしたが、2撃めをくらってフィアはアフィニのコクピットから抜け出した。

3撃目をくらえば間違いなく、コクピット内から炎が出るかもしれないとアフィニからきいていたからだった。


すぐにアフィニから離れようとしたフィアだったが、走り出した途端に機動型ドールはアフィニではなく、フィアを狙ってきた。


「どうして?まずい、これじゃまずいわ。」


「フィニ!ディッドにいったん乗り込むのよ。
1撃ならなんとか耐えられるし、その間にアルミス様たちがきてくれるわ。」


そんなディーナの声に反応する間もなく、フィニに向かって実弾が飛んできた。



「ああっ・・・。」


「こっちに乗れ!」


「誰?」


突然、フィアの目の前を真っ黒な翼が覆ったかと思うと空高く飛び上がった黒い物体は超高速で空の彼方へ飛び去ってしまったのだった。


「フィア、どこにいる?応答しなさい!」


「フィアさん、返事をして。」


アルミスとワガンが駆けつけてきたときには、フィアの姿はなく、アフィニとディッドそしてディーナしかいなかった。


「ディーナどうして、出たんだ!フィアはどうした?」


「す、すみません。フィアのピンチくらい救おうと思って・・・。
そしたらフィアがアフィニから飛び出してて、黒いヤツにさらわれてしまって・・・。ごめんなさい。」


「フィア・・・このことか?ラーガ・・・。」



「はい。申し訳ない、アルミス。
ビジョンが測れない状態になってしまって、うかつだった。」


「いや、また私のミスです。
フィアを守るって言っておいてまた、こんなことに・・・。

フィアを捜さなければ。早く見つけて救出しなくては!フィア・・・どこだ?」
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