お茶の香りのパイロット
ディッドが調べたルイという人物は見た目かなり田舎のリアクという小さな町にいた。


フィアはアルミスたちが予想した通り、移動中は眠らされていてこの地に着いてから目覚めた。


「う・・・いい匂い。
これは、紅茶の香り?」


「やっとお目覚めか、姫、お茶をどうぞ。」


フィアは黒ずくめスタイルにフロントとサイドの軽いウェーブ以外のサラサラ髪を後ろでまとめている青年をながめて目を見開いた。


「あ・・・あなたは・・・?どうして私はここに・・・?」

(それにこの声は・・・きいたことがあるような。)


「白い機動型ドールに狙われて死にそうになってたから、俺が助けた。
君は兵器の操縦には未熟だったから、ここへ連れてきた。」



「助けてもらったお礼はいいます。
ありがとうございました。

操縦だって未熟なのは認めます。ですが、アフィニは私の一部だし、マイマスターって呼んでくれています。
だから、明日の朝すぐにアフィニのところへ帰ります。
仲間に連絡をとらせてください。」


「だめだ。君は俺の顔を見てるし、俺の愛機も見た。
最高機密を知った者を生きて外に出すことはできない。

ロボットを扱う組織に参加しているのにそんなことも知らないのか?」



「うちの基地にはあなたのような怪しい人を見かけたことなんてないもの。
それに、私は今、あなたの名前も知らないし、ずっと寝てたからロボットのことも見てません。」



「どんな屁理屈をこねても外には出さないからな。」



「じゃ、死ねば帰してくれるの?」



「おい。真顔でそんなこというなよ。
俺が自己紹介する間にお茶でも飲め。

俺は、ルイリード・セイ・リアンティル、27才独身。
愛機はセイリール。

遠近変形機動型、つまりオールマイティなんだ、セイはな。」


「最高機密をそんなさらっとしゃべってもいいの?」


「君にはずっと俺のそばにいてもらうからかまわない。」



「ずっと!!!ばっかじゃないの。
すぐにアルミスがここを見つけて助けに来てくれるわ。」


「来たらアルミスが死ぬだけだ。
今の彼の能力では、俺には勝てない。」


「すごい自信ね。アルミスは天才科学者でもあるのよ。
機動型のディッドとヤーガンだってきちんと整備が終われば・・・」


「俺は捕まらない。
この地にやってきても、セイリールは見つけられない。

ちょっとした結界を張ってあるからな。
それに、セイリールは君がきてくれたことでもっと強くなる。」


「いったい・・・何を言ってるの?どういうこと?」


「目覚めてすぐに君を混乱させてもいけないかと思ったが・・・少しだけ手の内をみせてあげよう。」



ルイリードは人差し指でくるっと小さな円を描く動作をすると、プチップチッと数回音がして、フィアのパイロットスーツがバラバラに砕けて床に落ちた。


「きゃあ!!!!」


下着姿のフィアはその場に座り込んで、胸を両腕で押さえながらルイリードをにらみつけた。


「ほぉ・・・理解できているんだな。俺に魔力があることを。
それなら、話が早くて助かる。
化学一辺倒のアルミスよりも俺といる方が楽しそうだと思うだろ?」


「あなたの目的って何?
この世界を支配でもするつもり?」


「そんなめんどくさいことなんて興味はない。
俺は、この世界を戦争と混乱の渦にした張本人を葬りたいだけだ。

そいつは手下に白いドールを作らせて自分は力を蓄えているところだ。」


「なんですって!誰なの?その張本人って・・・。」


「アーティラス・ルイ・ロングリエ・ウィウスって知っているか?」


「えっ・・・アーティラスってアルミスのお兄さん・・・。
王様になる人よね。

でも体が弱くて、王様も王妃様も亡くなって、王族の方々も亡くなってしまって、どこにいるのかも不明で
生きているのもほぼ絶望的って言われてる人。」


「そうだ。王族が殺されていったがアーティラスの死体が発見されたニュースが流れたか?
体が弱いと言ったのは誰なんだ?誰の証言でそう言われてる?

アーティラスが死んでないとすれば、どうやって姿をくらませていると思う?」


「まさか・・・あなたと同じように、魔法で・・・結界とか・・・。」


「そうだ。あいつは隠れて行動している。
この時代の悪魔といってもいい。
そして、アルミスが活躍すればするほど、あいつも兄弟ということで美化されていくんだ。」


「だから、アルミスには接触しないってこと?
私たちは泳がされてたってことなの?」
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